投稿日:2023.08.25 更新日:2023.08.25

ユニバーサルカラーとは? 色の感覚の多様性

ユニバーサルカラーとは? 色の感覚の多様性

ユニバーサルカラー

CUD(カラーユニバーサルデザイン)は、人間の色覚の多様性に対応し、より多くの人に利用しやすい配色を行なったデザインのこと

*NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構より


ユニバーサルカラーはこのCUDに用いられる色、色の使い方・見せ方のことです。
多様性の社会で、多くの人にわかりやすい・普遍的な(ユニバーサル)デザインであることが、多くの人が対象となる情報伝達に関わるデザインに特に必要とされています。公共のサインなどに使われる色。看板や地図、ハザードマップなど。ユニバーサルカラー=見やすい、見分けやすい色とは?まず色の感覚を知るところから。多様なヒトの色覚についてまとめてみました。

感じる色は人によってこんなに異なる

色の見え方をについてのデータから答えた色数を図式化したイメージ
何色に見えますか?

人種や性別で色の感じ方には違いがあります。アメリカで行われた研究データによると図のようなカラーサンプルを見た男性は7色、女性は29色と答えました。男性が「ブルー(青)」と認識する色を女性はさらに細かく「スカイブルー」「ターコイズブルー」と多色に見えると回答しました。(*一部の研究結果なので個人差があります)これは、女性は色彩認識力が高く、男性は動体視力が高い傾向があるという研究データです。「狩猟」「採集」の役割を分担していた太古の人類の暮らしが関係しているという説が有力とされています。
細分化した色の差を感じる人は、一般の人(約100万色)の100倍多い、1億色の色を見分けられるそうです。見え方の差は目のメカニズム+脳の情報識別能力によって違いが生まれます。

目のメカニズム─色覚のタイプ

網膜には色を感じるセンサー「錐体細胞」があります。赤・緑・青の3色を見分けるためL錐体(赤)・M錐体(緑)・S錐体(青)がその役割を持ちます。先天的または後天的に、錐体を持たない・機能しないことで、感じない・感じにくい色となります。

1. 日本人の約300万人が先天的1型(P型)・2型(D型)タイプ

色覚タイプの分類では、多くの人はC型(Cypher/common type)のタイプ。次いで、遺伝的にP型・D型の人も多く、日本人の男性の20人に1人、女性の500人に1人存在します。他にもT型やA型、PとDを細分化すると色の識別の強弱で十数のタイプの分類があり、人種や性別によっても人口あたりの割合は異なります。

  • C型 一般色覚者 0型・・・ 一般的なタイプ
  • P型 色弱者 1型・・・赤色を識別しにくい
  • D型 色弱者 2型・・・赤・緑色を識別しにくい
  • T型 色弱者 3型・・・青色を識別しにくい
  • A型 色弱者・・・色を識別しにくい

2. 色覚タイプで異なる見え方

C型の見え方
P型の見え方(シュミレーターによる変換イメージ)
C型の見え方
D型の見え方(シュミレーターによる変換イメージ)

左の写真や図は多くのC型(一般型)の見え方、右は不思議な配色に見えますが、P・D型の色覚での見え方に変換しています。肉の焼け具合、赤いサインなど、赤色の見え方には違いがあることがわかります。示されている情報がわかりやすい(見分けやすい)かどうか? 左側の図は「C型の人にとっては目立って見える配色」ということになります。右側の図では文字は目立たなくなっています。
一方、色覚の違いで、D型タイプの人は対象物の色よりも「濃淡(明暗)」ですばやく判別できる特性により、暗がりで目が効く、自然の中の保護色の動物や虫をすぐに見つける力が強いそうです。色の持つ明暗差が見分ける場合に重要なことがわかります。

C型の見え方
D型の見え方(シュミレーターによる変換イメージ)

見分けにくい色は、上図の色サークルで見ると、暖色系の縦方向の赤〜緑(赤と緑、オレンジと黄緑)のような暖色系のみの配色や構成は混同色となり、注意が必要であることがわかります。この見分けにくい色の違いも、強弱個人差によるところが大きく、日常生活に問題なく見分けている人がほとんどです。(例:信号機など、重要なサインは見分けやすい光・色に調整されています。)

この色覚特性の違いで、D型タイプの人は対象物の色ではなく「濃淡(明暗)」ですばやく判別でき、暗がりで目が効く、自然の中の保護色の動物や虫をすぐに見つける力が強いそうです。
色の持つ明暗差が見分ける場合に重要なことがわかります。

3. 色覚は変化する

先天的なタイプによる色覚だけでなく、後天的な症状、また、多くの人が加齢による白内障の影響で色の見え方は変わってきます。白内障になると白くぼやけて見えるほか黄色がかった視界になり、青や黄色が見えにくくなるなど、誰もが色の見え方には変化が起こってきます。

黄色がかった白内障での見え方。ガスの青い炎が見分けにくくなる(イメージ)

これまで色覚異常というような呼び方をされてきましたが、何型もの色の感じ方の違いがあり、年齢による変化も含めて多くの人にあてはまることがわかってきた現在、「見える・見えない」ではなく、色覚のタイプの違いで「感じ方・強弱の違いがある」という認識に変わってきています。感じる色の世界は、個性。様々です。

まとめ

ユニバーサルカラーを考えるうえで色覚タイプの多様性を見ていくと、多くの人にあてはまること、色の区別には工夫が必要になってくることがわかります。P型・D型の人にとっても見分けやすい、表示・サイン、デザインにするには、色だけでなく、色の持つ明るさ暗さ、見る・使う環境、見る人の年齢、モニタやデジタルツールなどの表示媒体の光の強さなどに合わせた配色、配置が必要です。
制作の例とともに、カラーユニバーサルデザインについて次回、検証してみたいと思います。